デコさんの生き方

 去年の秋、マクロビオティックの先輩である中島デコさんがはじめて和道に来てくれて、ゆっくりいろいろとお話しする機会がありました。その時の話の中で、私がデコさんに「自然な生活しながら子育てしてきて、子育て大変でなかったですか?」と聞いたら、デコさんは「子育てって何?」と言うのです。「子育てそのものが生活だから、そんなに大変だったらできないよ」と言うのです。
 ライフワークバランスなんて言葉がありますが、ライフとワークが別物になっていると、その中のジレンマで、子育てや仕事が辛くなってくることがとても多いのではないかと思うのです。デコさんはライフでもなくワークでもなく、ただ生活を丁寧にしてきて、その中で生まれて来てくれた子どもたちと一緒に生活してきたのです。その生活の積み重ねの中で子どもたちは自然に成長して大人になっていったのではないかと思うのです。
 マクロビオティックを普及している人の中で、自分の子どもがその普及に携わることはなかなか珍しいのですが、デコさんは家族ぐるみでマクロビオティックの普及をしているのです。当の本人のデコさんは、マクロビオティックと言えるものでないと謙遜しますが、考え方・生き方はずばりマクロビオティックそのものだと思うのです。そんな生き方を成人した子どもたちも巻き込んで実践しているその秘密を知りたくて、先日「中島デコさんの自然な暮らし方・生き方」と称するお話し会と合宿を和道で開いたのです。当初はデコさんひとりで来るはずだったのですが、長女の子嶺麻さんも来てくれることになり、親子でのお話し会&合宿が実現したのです。子嶺麻さんには5人(二男三女)のお子さんがいて、そのうちの女の子3人を連れて来てくれました。デコさんチーム女子三世代で和道に来てくれたのです。
 合宿を通して、デコさんと子嶺麻さんの関係性、デコさんのお孫さん達との関わり、そしてデコさんの他の方への接し方をみていてあることに気づきました。デコさんの子どもたちがマクロビオティックという自然な暮らし方・生き方を実践するようになっているワケが、私なりにわかったのです。
 それはデコさんが人を魂のレベルで関わり、接しているからだと感じたのです。
 私たちは学歴や職歴、経歴、肩書などで人を判断しがちなところがあります。自分の子どもにさえ、いや自分の子どもだからこそ、学歴を積んで、いい職業に就き、いい経歴を積ませて、いい肩書を持たせて人並み以上の収入を得てほしい、などと考える親は少なくありません。ところがデコさんは、もちろん学歴や職歴を無意味・無価値と考えているわけではないと思うのですが、もっと大きな命としての魂の視点で子どもを含めて周りの人たちを見ているのです。この視点は、はじめ塾の和田先生もそうなのです。人の根源的な幸せというものを一番大事にしているのです。人間を含めてすべての動物がハダカで生れてきて、幸せになるために生きているのです。この根源的な命の視点を持っているのが自然なのです。
 多くの人が自然に接すると癒されるように、自然体の人に接すると人は癒されます。マクロビオティックも自然体で実践するところに、自然と人が集まってくるのです。それが自分の子どもであれば、継承していくことも自然であると思うのです。
 デコさんの無理のない自然な生活の積み重ねを見てきた子どもたちは、社会に出てそれぞれの人生を歩みながらも、いつしかデコさんと同じような生活に戻って、デコさんと同じようでいて違った感性でマクロビオティックを実践するようになっていったと思うのです。